紫外線と上手く付き合う

紫外線と上手く付き合う

シロハ便り 第161号 6月

 

紫外線と上手く付き合う

 

 5月といえば、ひと昔前は、暑くもなく寒くもなく、カラッとした気持ちの良いお天気が多い印象でした。

 

 でも、近年では、明らかに天候の傾向が変化し、暑い日と寒い日の寒暖差と気圧差が大きくなったように思います。

 

 特に今年の5月は、日照時間がとても少なかったです。 新緑の季節らしからぬ、どんよりとした曇り空が多かったように思います。

 

 日照時間が減って、日光に当たる時間が極端に減ると、身体の調子も崩しやすくなりますし、精神的な面でも悪影響を及ぼします。

 

 しかも、紫外線による日焼けを気にしすぎて、UV対策をし過ぎていたり、日に当たらないようにし過ぎていると、身体にとって大切な栄養素の欠乏を招き、危険な場合があります。 

 

 今日はそのお話です。

 

紫外線と上手く付き合う

 

 日焼けによるシミ・そばかす、嫌ですよね。 わかります。 

 

 しかも、温暖化の話題が出てきた頃から、温暖化の原因になっているフロンガスによって、オゾン層が破壊され、有害な紫外線が地上に届くようになり、皮膚がんの原因になっているというニュースも、一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。

 

 怖いですよね。 数年前に、日光には全く当たらない方が良いという事を、まことしやかにテレビで言っていた人もいました。(今はまったく見なくなりましたが)

 

 歴史的に見ても、太陽に当たることを崇拝する時代と日焼けを極端に嫌う時代が繰り返されていたようです。

 

 それぞれの時代背景や流行、ファッション、健康への意識などで様々な意見がありましたが、その上で、科学的な観測や計測技術が発展したことによって、今ではかなり正確な情報が出されるようになっています。

 

 紫外線のメリットとデメリットを正確に把握して、上手く付き合うことが非常に重要で、紫外線の恩恵とリスクを公正に判断し、噂や勝手なイメージで、どちらかに極端に振れ過ぎてはいけないということを、まず念頭においておくことが大切です。

 

 まず、結論から言います。

 

 『絶対に日焼けは避ける、その上で、自分の体質に合った時間で、適切に日光に当たる』

 

 つまり、日焼けするほどの紫外線は浴びてはいけない、けれども、適度な紫外線は浴びないといけない、ということです。

 

 ここ、難しいですよね。 この「適度」というところが難しいので、日焼けを全く気にしないか、徹底的に紫外線対策をしてしまうか、そのどちらかに傾きやすいです。

 

 ですが、紫外線の必要性と危険性を正しく認識し、理解した上で、しっかりとした対策と上手な付き合い方をそれぞれ個人個人で把握しておくことは、とても大切なことだと思います。

 

 そこで、紫外線について少し解説しておきます。 紫外線は、その周波数の違いで、UV-C 、UV-B、UV-Aと、3種類に分けられています。

 

 その中で、一番危険なのが、UV-Cで、一番周波数が細かいものです。 これは、100%、オゾン層によって吸収され、地上には届きません。 しかし、もし、オゾン層が破壊されて、このUV-Cが地上に届くようになると、生物の細胞のDNAを破壊してしまい、生物が存在できなくなります。 

 

 太古の昔、海が生まれてその中に植物が生まれ、植物が太陽の恩恵を受け光合成を行い酸素が排出され、その酸素が成層圏で化学反応を起こし、そしてオゾン層が出来ました。

 

 そのオゾン層がUV-Cを吸収してくれたおかげで、生物が生まれ、海から地上にその生活圏を広げられたという、広大なストーリーがあります。

 

 それが、人類が作り出したフロンガスによって、たったの数十年で穴が開くほど破壊してしまったので、大慌てで、国際条約が締結され、フロンガスの生産と消費が禁止された経緯があります。

 

 そのおかげで、現在、緩やかにオゾン層のオゾンが増加傾向にあるらしいですが、破壊が確認される前の状態に戻るには、2030年から2050年くらいまでかかるそうです。

 

 ただ、オゾン層の穴(オゾンホール)は南極にしか現れませんので、日本の上空にオゾンホールが突然出現する心配はありません。

 

 また、UV-Cの次に危険なUV-Bは、そもそもオゾン層に完全に吸収されず、地上に届いていて、オゾン層のオゾン量が少なくなると地上に届く量も増加します。

 

 このUV-Bも、日焼けするほどの量を何度も繰り返し浴びていると、細胞のDNAを破壊して皮膚がんを発症させる原因になることが分かっています。

 

 しかし、このUV-Bは、人体の中でビタミンDを生成するのに欠かせない役割をもっていて、皮膚にあるコレステロールによって合成され、タンパク質によって肝臓と腎臓に運ばれ活性化します。

 

 食べ物からもビタミンDは摂取できるのですが、それだけでは不十分で、しかも紫外線から皮膚で合成されたビタミンDの方が吸収されやすく、非常に重要な栄養素補給源となっています。

 

 このビタミンDはカルシウム調整を行っており、骨を強くする大事な役割をもっています。 

 

 日焼けを気にし過ぎて、妊婦さんや赤ちゃんが全く日の光に当たらないようにすると、重大なビタミンD欠乏症になり、骨がもろくなって成長するのに深刻な障害を起こします。 

 

 骨粗しょう症の大きな原因の1つにも、このビタミンD不足があることがわかっています。

 

 では、どのくらいの時間、太陽光に当たればリスクを最小にしつつ恩恵を得られるのかというと、これもそれぞれの人の肌のタイプや質によって大きく異なり、また、季節や時間帯によってもリスクが大きく変動します。

 

 ちなみに、紫外線は窓ガラスを通ってこれないので、お部屋の日の当たる場所で日光浴をしても、紫外線によるビタミンDの合成は起こりません。

 

 また、直射日光を避ければ、紫外線のリスクが激減するかと言えば、そうでもなく、散乱して四方八方から反射して紫外線が当たってきます。 木陰でも直射日光の50%の紫外線は浴びていることになるそうです。

 

 紫外線のリスクで、日焼けの他にも目への影響も大きくて、白内障の原因になります。 

 

 たとえ日傘を差していても、太陽の高さが地面から50度以上高くなると、つまり頭上にあればあるほど散乱光が顔に当たるので、太陽が高い時間帯に外出するならば、サングラスは必須だそうです。 
 しかも、四方八方から紫外線が反射してきますので、隙間のないゴーフルタイプでないと充分に防げないらしく、いくら日焼け止めを塗りたくっても、目への影響は甚大だということです。

 

 ですので、各自がそれぞれの生活スタイルに合わせて、どのくらいの紫外線量を浴びることが良いのかと、どのくらい紫外線防止対策をすれはよいのかを、しっかり調べておくことをおすすめします。

 

 参考になるのは、環境省から出されている、「紫外線環境保健マニュアル」と、気象庁から随時更新されているUVインデックス(UV指数)が、とても役に立つと思います。

 

 一応、一般的な紫外線対策と日光浴の時間に関する大まかな目安がありますので、それを基準に自分と自分の家族の健康対策にアジャストさせていってください。

 

 基本的に、気象庁で出されているUVインデックス(UV指数)で、外出は控えるようになっている時間帯に紫外線を浴びることは避けてください。 

 

 その時間帯に屋外にどうしてもいる必要があれば、日傘や帽子、サングラス、長袖のシャツ、最強レベルの日焼け止めを使用してください。

 

 一方、身体に必要なビタミンDの生成に必要な日光浴の時間は、夏季で、手の甲もしくは手のひらと顔が15分間日光に当たれば充分と言われています(日陰で30分程度)。 

 

 これが冬季では、関東地方では、45分以上、北海道では2時間以上の日光浴が必要と言われています。 

 

 これに対して、日焼けを起こす最小紅斑量の紫外線量に達する時間は、その4〜6倍の時間だとも言われています。

 

 なので、極端に日光を避ける必要はないともいえるので、危険な時期と時間帯を知って適切に対策をしておけば、日光浴の計り知れないメリットの恩恵が得られますし、徹底的に日光を避けてしまうと、体内時計の調節やビタミンの生成、殺菌効果や免疫機能の調整、精神的な緊張緩和、消化液の分泌、胃腸の働きの活性化、血行の促進など、生命にとって重要な働きを阻害してしまいます。

 

 ぜひこの機会に、正しい情報に触れて、紫外線に対する嘘・ホントや、自分に合った付き合い方を調べてみることを強く推奨します。

 

UVインデックス」はこちら⇒https://www.data.jma.go.jp/env/uvindex/index.html?elem=0&area=0&lat=34.2&lng=138.53&zoom=5
紫外線と上手く付き合う

 

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スマホだとややこしいので、このアクロバットリーダーがインストール済みのパソコンで「紫外線環境保健マニュアル」と検索して閲覧することをおすすめします。